会長からのご挨拶

〜大組織だから出来ること出来ないこと〜

秋葉四郎

日本歌人クラブは、わが国で(もちろん海外在住者も含むが)短歌を作る人の最も多くが会員となって参加している組織である。五千名に近い会員がいわば身銭をきってこの無償の文芸を支え、守り、進展させようとしている、日本最大の短歌作者の集まりである。この大組織だという事実は重く且つ大きい。これを誇りとし、大組織だから出来ることが沢山あるのだ。例えば、作歌者に欠くことのできない優れた文化体験を身近に提供すること。すでに定着している現代短歌セミナ−でも、人間国宝のような人を招いて直に話を聞くことも日本歌人クラブという組織なら可能である。要するに、会員がテレビ、新聞、雑誌などで享受している通俗性の高いものより、はるかに質が高く本格的で、しかも実質的な情報が提供でき、共有できるのだ。また、われわれはとにかく数が多いのだから、内容的には短歌の大道を進むことになる。これも大組織の必然のうちである。倭小なもの、試行的なものはとりあえず、多くの会員の共感は得られまい。伝統的で純粋な創造の道が大切にされる結果になるのである。代々の会長が、これらの可能性を着実に実現してきたことに私は深く敬意を表する。そして改めてこれを継承する意味を自覚し、より充実させてゆくことが先ず私の使命だと心得、大胆に進んでまいりたい。

しかし、大組織だから出来ないことがある、ということも忘れてはならない。その出来ないことのもっとも身近なことは、有体に言えば小回りがきかないということである。きちんきちんと機関決定をし、その話し合いの結果にもとづいてすべては進められることになる。即ち私情を挟む余地はない。個人的な好悪などで、会の運営に協力しないとか、するとか、そんなことの許されないのが大組織である。中央幹事会にあっても、ブロックの役員会にあってもこの公私の別は、きちんと自覚され、今まで以上に洗練された組織として機能させなくてはならない。それがこの大組織の活性化の第一歩である。